私はいろいろな場面でお酒を飲んできました。
体質的にはお酒に対しては強くないのですが、「お酒が入ると気が大きくなる」状態が好きでいろんな人とお酒を飲みました。よく飲みに行くのは20年来の同姓の友達でもっぱら浅草で飲みます。浅草で飲む理由は私と彼女の住んでいるところの中間が浅草だからです。行きつけの上海料理屋があり、そこではビールや紹興酒を飲みます。
料理はとても美味しく、香港で修行した料理人さんが作ってくれます。とくにキュウリの南蛮漬けやエビのガーリック炒めは絶品で本場の上海や香港よりも美味しいくらいだと私は思っています。そんな美味しい料理を前にするとお酒も進みます。一緒に行く彼女は私よりもお酒が強いですが、この店は値段も高いので多少セーブして飲んでいるんだろうと思います。悲しい話ですが、お互いに収入が下がったのでこの店に来れなくなるのも時間の問題かも知れません。でもたまに会うのだからとがんばってこの店で飲むときもあります。20年来の友ですのでお互いに気心が知れており、飲むと一層愉快になります。丁度1年前のことですが、ほろ苦いお酒もありました。
1年半くらい担当して貰っていた美容師さんが渋谷の店を辞めて田舎に帰ることになったのです。最後にお店に行ったとき、ずっと思っていた彼に勇気を出して飲みに行こうと誘いました。そうしたらさらっと流されて返事はしてもらえませんでした。おそらくただでさえ忙しい年末に加えてお客さんの予約も一杯に詰まり、引っ越しの準備やその他もろもろですぐには返事が出来ない状態だったのでしょう。ある時、メールが来て「来年の初めだったらいいですよ」とのことでした。
引っ越しは11日ですのでまさに引っ越しの一週間前。場所は新宿で飲むことになりました。和食が好きだということで私が選んだ店は「北海道」。待ち合わせ時間の7時よりも1時間位前に新宿に到着し、ドキドキしながら店に向かいました。彼はその日休みだったとのことですが、7時ちょっとすぎに店に到着。あまりの男前ぶりに女の店員さんも二度見したほどです。たらばがにの刺身や、ほっけの焼き物や、ホタテなどちょっと予算オーバーでしたが、一杯頼んでしまいました。お酒は北海道産の「熊ころり」を飲みましたがいままで飲んだことのない美味しい日本酒でした。お酒が進んで彼は元旦に結婚したことを聞きました。彼は職業柄、もてないわけはないし、21歳も下なので対象外なはずですが、それをきいてちょっとショックでした。素直に「おめでとう」と言えない私。とたんに「熊ころり」がほろ苦く感じました。彼は東北出身らしくお酒が進んでもまったく顔に出ません。私ひとりが赤い顔をして、気持ちがよいのか悲しいのか微妙な顔をしていました。店を出て彼は友達とこれからゲームの試合だといって京王線の乗り場に消えていきました。私は山手線で品川までの間、ずっとほろ苦い「熊ころり」の味を思い出していました。